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第二十七回 労働安全衛生と化学物質管理

日本ケミカルデータベース株式会社
コンサルタント 北村 卓

改正労働安全衛生法と米国の労働安全衛生法(OSHA) (1)

化学物質の種類と使用方法の多様化で、労働安全衛生法(安衛法)と政省令に明示的に記されている事項への対応だけでは、化学物質に起因する労働災害が完全には予防できないことを最近の事故災害事例が示しています。これからの化学物質管理では事業者の自主的な活動が必要であることは、安衛法改正の議論の過程でも指摘されています。2014年6月の改正では事業者に化学物質のリスクアセスメントを義務化しましたが、対象はSDSの提供が義務化されている640物質であり、現実はそれよりもはるかに多くの種類の化学物質が使用されているので、法令の義務化した事項だけへの対応では十分ではないことはあきらかです。しかし、労働安全衛生に専門の人材を有する企業はともかく、多くの企業は自主的な活動が必要であることはわかっていても、実際にどのようなことをすればよいのかよくわからないのが現状でしょう。

そこで米国のOSHA(Occupational Safety and Health Act)を参考に、事業者の自主的な活動はどのように進めることができるのか考えたいと思います。OSHAは英国の労働安全衛生法とともに、比較的早い時期に事業者の自主的な管理を求めた法律と言われています。しかし、本稿ではOSHAの枠組みの中で米国で勧められている自主的管理の内容ではなく、国によって異なる化学物質の管理に対する法律の枠組みの違いを考えながら、OSHAにあって安衛法には明文化されていないが労働安全衛生を考える上で留意したい事項を、日常の活動でどのように生かすことができるのかという点を考えたいと思います。これは決してOSHAが安衛法よりも優れている、あるいは進んでいるということを意味するものではないことをお断りしておきます。

安衛法は、法令で化学物質や作業に必要なばく露防護策や基準等を示し、これに則した管理を事業者に求めています。化学物質や作業を具体的に示した規制にはどちらかといえばハザード管理の性格がありますが、これからの事故災害の未然防止にはリスク管理の重要性が指摘されています。社会の安全・安心に対する関心の高まりは、労働安全衛生だけでなく、環境や製品の使用者への影響に至るまで事業者には全ての側面でリスクベースの化学物質の管理方法への見直しを求めているといえます。

安衛法は、①発散抑制、②保護具の着用、③作業環境測定と作業環境の評価、④管理体制、⑤安全衛生教育、⑥健康診断、⑦法律による化学物質の規制(製造禁止、許可)、⑧有害性の調査と情報伝達、⑨リスクアセスメントなどを化学物質管理の基本と考えていますが、今回は労働者の化学物質に対するばく露抑制に関する自主的対応を考えます。なお、“OSHA”は米国の労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration)を意味することがありますが、ここでは労働安全衛生法(Occupational Safety and Health Act) の略称として用いています。

安衛法には、事業者(雇用者)と労働者(被雇用者)の関係に留まらず、製造・輸入・販売などの事業活動全般に関しての規制がありますが、OSHAは労働安全衛生のための、事業者と労働者の間の関係、とりわけ事業者の責務を規定しています。法律のもとで、施行令や労働安全衛生規則(安衛則)と有機則や特化則などの特別規則、指針類で規制の内容が具体化されていますが、OSHAも同様に労働長官の制定するOccupational Safety and Health Standardがあります。名称は基準(Standard)ですが強制的な事項が多く日本の規則に相当するのでOSHA規則と略記します。

OSHA規則はいくつかのサブパートからなり、化学物質の物理的危険性に関するサブパートH、個人用保護具に関するサブパートIとともに化学物質の作業者の健康障害に関する事項はサブパートZ「有毒及び危険物質」にあります。

サブパートZは空気汚染物質(1910.1000)から始まります。何度もこのメールマガジンで触れたように、労働者の有害化学物質へのばく露で最も注意したいのが吸入ばく露であり、健康を守るためには労働者の呼吸する空気からの有害物質の蒸気や微細粉末へのぱく露がないようにする、ゼロにすることが難しいときでも作業環境の基準値を超えないように気中の濃度を抑制することが求められます。

1910.1000のTable Z-1 には、時間加重平均ばく露許容値(TWA)、短時間ばく露限界(STEL)等の許容濃度があります。これに対して、安衛法には許容濃度の設定はなく、作業場の管理区分を決定するために用いられる管理濃度が定められています。二つの濃度は定義も目的も異なるので並べて論じることは必ずしも適切とはいえないのですが、管理濃度の設定には日本の産業衛生学会(産衛学会)の許容濃度勧告値やACGIHの許容濃度が、OSHAの許容濃度も米国ACGIHの許容濃度を参考としているので、誤解を恐れずに言えば、どれも留意すべき作業環境基準と考えることができます。安衛法の管理濃度は90物質あまりに設定されているのに対してOSHAは400以上の物質にばく露限界値があり、ACGIHのTLV等から引用されています。ただし、毎年更新される最新の値が採用されているわけではありません。産衛学会は許容濃度の勧告値を200物質強に定めています。これはインターネットやJCDBのデータベースから容易に入手できるので、事業者のリスク管理・自主的管理にもっと広く利用されてもいいでしょう。ネット上で公開されていないACGIHの許容値は化学品の購入者には、製造(販売)者のSDSや各種文献などの二次資料からの入手になるでしょうが、労働省のリスク評価検討会報告書(平成17年5月)も、「事業者のリスク評価」のための主要文献に挙げており、さらに厚生労働省の通達(平成25 年10 月1日改正、「洗浄又は払拭の業務において事業者が講ずべき化学物質のばく露防止対策の留意事項」)でも、ACGIHの許容値を作業場の濃度レベルが超えない基準の一つとしているように、日本でも作業環境を維持管理するための指標として参考になります。

ばく露限界値は必ずしも世界的に同じ値とは限らず、測定方法や用語の定義も異なることがあるので数値を比べるだけでどの規制が厳しいかという比較はあまり意味がないでしょう。しかし数値には桁が異なるほどの大きな違いはあまりありません。また、作業環境測定値はサンプリング条件等で変動し易いものですので、作業環境改善では規制値や基準値にギリギリ合格するような対策ではなく、実際には余裕のある安全サイドに立った管理を目指すので、どの値を採用しても管理手法やばく露防止策に大きな違いは生じないでしょう。それよりも、事業者が安衛法の管理濃度のほかに、多くの化学物質にばく露限界値があることを認識して自主的な判断でより良い作業環境を実現し維持することに意義があると思います。

自主的な判断といってもどの値を基準にしたらよいのかを決めることには専門性も要求されるので容易な作業ではありませんが、どのような管理方法を採用するにしても、実態の把握(作業環境の定期的な測定)と、その結果の記録が必要となります。自主的な管理では、法令の定める作業環境測定方法でなくても、検知管などの簡便な方法の利用も使用することができるでしょう。

OSHAには、許容濃度のほかに特に重篤な影響が懸念され、Sub Part Zに独立して取り上げられている個別物質にはアクションレベル(AL)が設定されているものがあります。ALは、概ねTWAの半分程度に設定されていますが、これを超えると作業環境の再測定や労働者の健康診断などの対応が求められ、いわば作業環境が「注意」の状態になったと考えることができます。この考え方をそれ以外の物質にも応用して、事業者が自主的に環境測定結果がACGIHのTWAや産衛学会の勧告値、あるいは安衛法の管理濃度などの50%を超えたときに改善の必要性を認識して対策を行えば化学物質に起因する労働災害は予防できる可能性が高くなるのではないでしょうか。

予防的な対策として品質管理手法の作業環境管理への応用もあるでしょう。製品が規格に合格していても観測値に偏りがあったり時系列的な変動が認められると、工程に何らかの変化がおこった可能性があり、将来的な規格不合格の製品の発生につながるものとして対策を検討しますが、同様に作業環境測定結果が規制(基準)値を下回っていても、観測値に新たな傾向が認められたときには何らかの異常が起こったと考えて対応を検討してもよいでしょう。

化学物質を取扱う作業で、危険有害性の影響が作業者に及べば、取り返しのつかない事態となることもあるので、規制値への合格・不合格だけでなく、安全サイドに立ち何らかの予兆を感じた時点の自主的な環境管理で、早めに手を打つことが望ましいと思います。

安衛法では有機則、特化則、粉じん則で、作業者の有害物へのばく露予防のために、フードやドラフトに制御風速を定めています。作業者ばく露の前に有害物質を気流に乗せて除去し、作業者へのばく露を予防する考え方によっています。OSHA規則では発がん性物質(1910.1003)を移し変える作業などは実験用フードの中で行い、そこでは日本の制御風速に当たるFace Velocityが規定されていますが、有害物一般の取り扱いでは業界団体の定めたFace velocityを引用しています。その数値は日本の制御風速と異なっていますがその違いは大きくありません。制御風速の設定では、必要な風速を十分に確保できる性能を持つ設備仕様の設計とともに、間違っても有害物発散源の下流に作業者が入ることがないような設備の構造設計も必要でしょう。

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