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第二十八回 労働安全衛生と化学物質管理

日本ケミカルデータベース株式会社
コンサルタント 北村 卓

改正労働安全衛生法と米国の労働安全衛生法(OSHA) (2)

労働安全衛生法(安衛法)は、労働者の安全と健康を守るための最低限の基準を定めたもので、違反には罰則が定められていますが、事故災害を起こしても過失がなければ法的に責任が問われることがなく、この点で一般的な安全配慮に対して罰則を定めている米国の労働安全衛生法(OSHA)とは異なっています。これが、事業者の自主的な安全衛生活動が事業活動全体の中で優先度が低くなり、そのためになかなか進まない理由になっていなければいいのですが。

安全衛生の管理の仕組みとして厚生労働省は安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)の導入を勧めています。しかし実施に当たっては、マネジメントシステム全般にいえることですが、システムの要求する細かい事項や手順を実施することだけでなく、経営層がその仕組みを承知して先頭にたって本気で取り組むことが重要です。厚生労働省のOSHMSでは、安衛法の求める管理体制で専任された安全衛生管理者やその他の安全衛生の実務担当者や産業医あるいは会議体として安全衛生委員会の枠組みを使って実施します。多くの役職や会議体を設置は組織の重層化につながり、かえって「船頭多くして…」の形になりやすく、安全衛生管理者や作業主任者などの実務担当への負担を増やすだけでなく、責任の所在が曖昧となることが懸念されます。事故災害が起こると実務担当者や事故災害の被災者(当事者)の注意不足などがクローズアップされる傾向がありますが、彼らは経営層の意向や考え方を斟酌することがあるので、経営層が安全衛生に本気であることが伝わらなければ安全衛生活動に抜けが生じることがあります。専門性を持つ安全衛生担当者が事業所の安全衛生計画のもとで、経営層に直属して強い権限を持って活動できる体制の方が効果的な場合もあります。

OSHAには安全衛生を守る「医師またはその他の健康管理に関する免許を持つ専門家: Physician or other licensed health care professional (PLHCP)」に大きな権限を与えています。医師(Physician)のほかに所定の免許を受けた看護師などがその役割を担うようです。日本でそれに相当する産業医の人数は事業場に比べて少なく、また大規模な事業所でなければ常駐することも無いので、現場の安全と作業の実態を詳細に理解することも難しいでしょう。そのような意味で、医師に限定されずに安全衛生の専門職が事業場に常駐して、現場の実態をより詳細に把握することができれば安全管理上大きな力になるように思われます。

OSHA規則と安衛法とその政省令を比べると、安全衛生を守る手法にも若干の違いを感じます。例として、ここでは特定化学物質障害予防規則(特化則)とOSHAの発がん性物質に対する規則(1910 Sub Part Z 1003)を比較して、事業者の自主管理の参考となる事項を抽出したいと思います。

OSHA1910.1003には化学物質の規制(禁止・許可)に関する規制はなく、特化則・有機則にある設備とその保守管理に関する細かい規定もありません。一方、有害物質の管理では作業場での労働者ばく露に対する衛生対策だけでなく規制区域(作業場)外への拡散にも配慮されています。後者は有害物質を直接には取扱わない労働者や環境への好ましくない影響を排除しようとするものですが、規制区域を周囲に対して負圧にしなければならないこと、労働者が規制区域外に出るときには汚染された保護衣等を脱衣しなければならないこと、粉体の規制物質は乾燥状態で清掃しないことなどが示されており、これらの規定は規制区域内で作業をする労働者にも日常的な管理と注意の必要性を喚起することにもつながるでしょう。

特化則・有機則・粉じん則でも類似の規定がありますが、OSHAの方が具体的でわかりやすいように思われます。その要求事項は日本でも実施がそれほど難しくないものが多いので、自主的な安全管理の方策として採用することも可能でしょう。日本でも取り扱い作業区域外の労働者や、もっと広い領域としての事業場周辺住民にも健康障害を及ぼした事例もあるので、このような自主管理活動として考えてもいいではないでしょうか。

【終わりに】

二年以上にわたり、労働安全衛生と化学物質の問題を労働安全衛生法に沿って解説してきました。2014年の改正労働安全衛生法では、メールマガジンに記した事業者の「リスク管理と自主的対応」への要求が、以前よりはっきりしてきました。

法規制は、対象となる事業者の多くがそれほど無理をしないで実施可能であることを配慮していますし、多種多様な状況で使用される化学物質については大多数の場面で適用が可能で、個別のあるいは特殊な状況までを想定したものではないことから、法規制遵守だけでは必ずしも労働者の健康と安全を完全には守りきることができない制約はありますが、そうであっても法規制の遵守は安全衛生を維持するためには最低限のレベルの確保であり、安全衛生管理の第一歩ということができるので、規制の内容を正しく理解し可能な限り活動を拡大することが望まれます。

化学物質の健康影響(毒性)を知ることも重要ですが、まだまだわからない部分も多く残されているだけでなく、想定外の新たな健康影響が問題となって、後になってさかのぼって事業者の対応が問題になることがあります。その時点では事業者に落ち度は無かったとしても、社会的責任を免れることができないこともあります。化学品の取り扱いでは、まずSDSで化学品の性状や物理的特性を理解し、ばく露防止策を考えることから始めるのがいいでしょう。SDSの内容に不明点や疑問点があれば発行者に問い合わせたりデータベースを参照して、可能な限り化学品の性状と特性を理解することが必要です。法規制物質は一定の根拠をもって指定されるので、法規制データベースも参考になります。工業的に使用される化学物質はこれからもその種類が増え、現在と異なる新たな用途に使われることもあるでしょうが、使用する化学品とそれに含まれる化学物質の性状と物理的特性を理解することが安全管理の第一歩であることを強調してメールマガジンの連載を終わります。

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