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第十回 労働安全衛生と化学物質管理

― 有機溶剤中毒予防規則 (有機則) ② ―

日本ケミカルデータベース株式会社
コンサルタント 北村 卓

前回に続いて有機則の解説を行います。

Ⅶ. 事業者による製造・取扱い設備の管理

  • 局所排気装置のフード等 (第14条)
    1. 有機溶剤の蒸気の発散源ごとに設ける。
    2. 外付け式のフードは、有機溶剤の蒸気の発散源にできるだけ近い位置に設ける。
    3. 作業方法や有機溶剤の蒸気の発散状況及び有機溶剤の蒸気の比重等からみて、溶剤の蒸気を吸引するのに適した型式及び大きさのものを用います。
    4. 事業者は、局所排気装置のダクトについては、長さができるだけ短く、ベンドの数ができるだけ少ないものとしなければなりません。
  • 定期自主検査 (第29条)
    対象は局所排気装置・プッシュプル型換気装置・除じん装置・排ガス処理装置・排液処理装置です。
    1. 局所排気装置の定期自主検査の実施 (第20条)
      一年以内ごとに一回、定期に、次の事項について自主検査を行う。実施項目は、
      • フード、ダクト及びファンの摩耗、腐食、くぼみその他損傷の有無及びその程度
      • ダクト及び排風機におけるじんあいのたい積状態
      • 排風機の注油状態
      • ダクトの接続部における緩みの有無
      • 電動機とファンを連結するベルトの作動状態
      • 吸気及び排気の能力
      • その他性能を保持するため必要な事項
    2. プッシュプル型換気装置の定期自主検査 第20条の2
      • 局所排気装置の規定を、プツシュプル型換気装置に関して準用します。「排風機」は「送風機及び排風機」と、「吸気」は「送気、吸気」と読み替えます
    3. 定期自主検査の記録 (第21条)
      局所排気装置等の自主検査を行ったときは、次の事項を記録して、三年間保存します。
      • 検査年月日
      • 検査方法
      • 検査箇所
      • 検査の結果
      • 検査を実施した者の氏名
      • 補修等の措置を講じたときは、その内容定期自主検査の記録
    4. 点検 (第22条)
      局所排気装置をはじめて使用するときや、分解して改造、修理を行ったときは、点検を行う。
      • ダクト及び排風機におけるじんあいのたい積状態
      • ダクトの接続部における緩みの有無
      • 吸気及び排気の能力
      • その他性能を保持するため必要な事項
      • プッシュプル型換気装置にも準用します。「吸気」は「送気、吸気」と読み替えるのは定期点検項目と同じです。
    5. 補修 (第23条)
      自主検査・点検を行った場合に異常を認めたときは、直ちに補修しなければなりません。

Ⅷ. 作業環境管理に関する規定

  • 作業環境測定 (第28条)
    六月以内ごとに一回、定期に、有機溶剤濃度を測定し、次の事項を記録して、三年間保存します。
    • 測定日時
    • 測定方法
    • 測定箇所
    • 測定結果
    • 測定を実施した者の氏名
    • 測定結果に基づいて労働者の健康障害の予防措置を講じたときは、措置の概要
  • 測定結果の評価 (第28条の2)
    作業環境評価基準に従って第一管理区分、第二管理区分、第三管理区分に区分して、測定結果を評価します。評価を行ったきは、次の事項を記録して、三年間保存します。
    • 評価日時
    • 評価箇所
    • 評価結果
    • 評価を実施した者の氏名
  • 評価の結果に基づく措置
    1. 第三区分への措置 (第28条の3)
      • 直ちに施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、第一管理区分・第二管理区分となるように必要な措置をとり、その効果を確認します。
      • それまでは、呼吸用保護具を使用させ、健康診断など健康の保持を図るため必要な措置を講ずる
      • 評価の記録、講ずる措置、評価の結果を労働者に周知する。
    2. 第二管理区分への措置 (第28条の4)
      • 施設や設備の設置・整備、作業工程や作業方法の改善など作業環境改善に必要な措置を講ずるように努める。
      • 評価の記録及び講ずる措置を労働者に周知する。
      • 第二区分への措置は努力目標とされていますが、第一区分になるように改善策を実施することが望まれます。

Ⅸ. 健康管理に関する規定

  • 健康診断の実施 (第29条)
    • 対象は屋内作業場等(第三種有機溶剤等はタンク等の内部作業)における有機溶剤業務です。
    • 雇入れ、配置替え、六月以内ごとに一回、定期に、医師による健康診断を行わなければなりません。
    • 物質毎の検査項目は別表に記載されています。
  • 健康診断の結果 (第30条)
    • 有機溶剤等健康診断の結果に基づき、有機溶剤等健康診断個人票を作成し五年間保存します。
  • 健康診断の結果についての医師からの意見聴取 (第30条の2)
    • 有機溶剤等健康診断が行われた日から三月以内に行います。
    • 医師の意見を有機溶剤等健康診断個人票に記載します。
  • 健康診断の結果の通知 (第30条の2の2)
    • 健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、健康診断の結果を通知します。
  • 健康診断結果報告 (第30条の3)
    • 遅滞なく有機溶剤等健康診断結果報告書を労働基準監督署長に提出します。
  • 緊急診断 (第30条の4)
    • 有機溶剤により著しく汚染/多量に吸入したときは、速やかに医師による診察/処置を受けさせます。
  • 健康診断の特例 (第31条)
    健康診断は、異常所見の有無や管理状態の良否で特例措置がありますが、これには労働基準監督署長の許可が必要です。

Ⅹ. タンク内作業 (第26条)

タンク内作業は有機溶剤を取扱う業務の中でもとりわけ危険性が高く、事故災害の発生も多いため、詳細な規定があります。有機溶剤の有害性に絞った注意事項が示されているが、同時に閉鎖空間で起こりやすい酸素欠乏に対しても適切な対策をとることが必要です。

  1. 作業開始前、有機溶剤等が流入するおそれのない開口部をすべて開放します。
  2. 有機溶剤等により著しく汚染されたとき、作業が終了したときは、直ちに身体を洗浄させ、汚染を除去さます。
  3. 事故が発生時に労働者を直ちに退避させることができる設備・器具等を整備しておきます。
  4. 有機溶剤等を入れたことのあるタンクについては、作業開始前に、次の措置を講じます。
    • 有機溶剤等をタンクから排出し、タンクに接続するすべての配管からタンクの内部へ流入しないようにします。
    • タンクの内壁を洗浄し、洗浄に用いた水又は水蒸気等をタンクから排出します。
    • タンクの容積の三倍以上の量の空気を送気/排気するか、タンクに水を満たした後、その水をタンクから排出します。

Ⅺ. 保護具

  • 送気マスクの使用 (第32条)
    1. 有機溶剤等を入れたことのあるタンクの内部における業務(第一条第一項第六号ヲ)
    2. 蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置等、全体換気装置を設けないで行うタンク等の内部における業務
  • 送気マスク又は有機ガス用防毒マスクを使用しなければならないタンク内の業務 (第33条)
    1. 全体換気装置を設けたタンク等の内部における業務
    2. 臨時に有機溶剤業務を行う場合の適用除外等で、蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置等を設けないで行うタンク等の内部における業務
    3. 短時間有機溶剤業務を行う場合の設備の特例で蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置等を設けないで吹付けによる有機溶剤業務を行う屋内作業場の業務
    4. 局所排気装置等の設置が困難な場合における設備の特例(第10条)により、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置棟を設けないで行う屋内作業場等における業務
    5. 他の屋内作業場から隔離されている屋内作業場における設備の特例(第11条)の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置等を設けないで行う屋内作業場における業務
    6. プッシュプル型換気装置のブース内の気流を乱すおそれのある形状を有する物について有機溶剤業務を行う屋内作業場等における業務
    7. 屋内作業場等において有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備を開く業務
      本来は局所排気装置・プッシュプル型換気装置を使用しなければならない場合に、実施が困難であることを理由に特例措置で全体換気装置を用いる場合には、安全性の確保のために送気マスクの使用が定められています。
  • 保護具の数等 (第33条の2)
    1. 事業者は同時に就業する労働者の人数と同数以上を備え、常時有効かつ清潔に保持します。
    2. 労働者にも使用義務が課せられています。 (第34条)

Ⅻ. 有機溶剤中毒予防規則 (有機則)のまとめ

有機則の規定と前回の特化則の規定を比較すると、有機則での規定の方が全体的に緩やかになっていることに気が付かれるでしょう。これは、有機則が有機溶剤の持つ揮発性や親油性にもとづく特性を考慮して、作業者へのばく露を低減するための適切な取扱いを定めることに重点を置いているいるからです。しかし、特化則になく有機則にある溶剤でも、あるいはそのどちらの特別規則になくても、例えば発がん性などの重篤な健康障害をもたらす化学物質はたくさんあるので、すべての化学物質の取扱いでは、健康障害の重篤性を考えれば特定化学物質と同等の、揮発性などの物理的性質を考慮すれば有機則と同等の慎重な取扱いが必要であることはご理解いただけると思います。例えば、テトラクロルエチレンは有機則にはありますが、特化則にはなく、IARCの区分では2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)に分類されていますし、昨年胆管がんの発症で大きな問題となった1,2-ジクロロプロパンは、有機則にも特化則にも挙げられていません。これは、労働安全衛生法の規制が後手を踏んだというよりも、化学物質の健康有害性に対しても科学的な知見の集積が現在でもなお十分でなく、法規制の対象とするには情報が不足していることによるものと思います。

有機則は有機溶剤による作業者の健康障害の予防が規制の目的ですので、引火性・爆発性などの物理的危険性に対しては、何も規制を加えていません。これらの物質を取扱う場合には、物理的危険性への対処も重要ですので、SDS等を参考として事業者は総合的な安全衛生対策を取ることが求められています。物理的危険性への対処は消防法が必要な事項を定めています。

有機則は化学物質(有機溶剤)を規制するための法令ではなく、これらを使用する作業に関する規制と考えるべきです。従って、有機則では専ら溶剤蒸気が滞留しやすい屋内作業場、とりわけタンク内の作業のように閉鎖空間での規制に重点が置かれています。しかし、屋外の取扱いや周壁のない開放系での使用でも、何らかの理由で作業者のいる場所が特異的に溶剤蒸気が特異的に高濃度で滞留することもありますので、できるならばこのような作業場でも、有機則に記されている作業者のばく露防止策は必要でしょう。少なくともどのような作業場所であっても、どのような取扱いをするのであっても、最低限有機溶剤用の防毒マスクの着用は必要です。保護具は作業性を低下させるとして現場の作業者は着用を好みませんが、現場の指導者・監督者は作業内容と取扱う有価溶剤の健康有害性の考慮して、保護具着用の励行を勧めることが必要です。また、現場から離れている上級の管理監督者も、有機溶剤ばく露による最悪の事態を回避するために、万難を拝して保護具の着用を現場に指示しなければならないでしょう。最悪の事態で死亡被災者が発生すると、会社そのものの存続が問われる状況になることを忘れてはなりません。

なお有機溶剤のばく露経路は吸入だけでなく経皮も無視できないことを、冒頭に記しましたが、有機則では経皮ばく露に関しての記述はほとんどありません。化学品(物質)の性状を理解してJIS規格に適合した適切な保護具の使用が必要です。

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