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第六回 労働安全衛生と化学物質管理

― 作業環境管理 ―

日本ケミカルデータベース株式会社
コンサルタント 北村 卓

これまで、化学物質管理の視点で労働安全衛生法・同施行令・労働安全衛生規則を見ました。労働安全衛生法には、化学物質と何らかの関係を持つものに限っても、特定化学物質中毒予防規則(特化則)、有機溶剤中毒予防規則(有機則)、粉じん障害予防規則(粉じん則)、石綿障害予防規則(石綿則)、鉛中毒予防規則(鉛則)、四アルキル鉛中毒予防規則、などの多くの特別規則(省令)が制定されていますが、ここでは一般的な化学品(化学物質)の管理や取扱いに関するものとして、特化則と有機則を考えたいと思います。

この二つの省令は、化学物質へのばく露による作業者への健康影響を最小化するために様々な規則を定めています。労働現場での作業者の化学物質への主要なばく露経路は、呼吸器経由の「吸入」と皮膚からの「経皮」です。姿形の見えない化学物質に作業者はそれと気づかずに短時間あるいは慢性的なばく露を受けることがあり、中でも吸入ばく露の予防は労働衛生では一つの重要な課題です。

ばく露の最小化には取扱い設備の密閉化で化学物質を作業環境中に発散させないことや、より健康影響の少ない化学品への代替等による本質的な対策が最優先とされますが、化学物質はそれぞれの特有の物理的・化学的特性を考慮して選択・採用されていますので、危険有害な化学品であっても、簡単に代替を実現できるとは限りません。また、原料の受入から製品の取り出しに至るすべてのプロセスの密閉化も容易ではありません。そこで、排気・換気装置による工学的対策によってばく露低減を図ることが広く行われています。この方法は、発散源から速やかに危険有害物質を除去し、作業環境への拡散を防止することで環境濃度を低下させることで作業者へのばく露を低減するものですが、工学的対策は本質的な安全化ではなくリスクが残るので、省令は事業者にばく露低減設備の設置とともに、適切な設備の保守管理と稼動を求めています。

各省令の説明の前に、作業者への吸入ばく露を低減するための排気(換気)装置に関する各省令に共通した考え方を整理します。今回記すことは基本的な部分で、各省令には適用除外や特例に関する規定があります。その一つ一つの説明解説は紙数の関係で省略しますが、法令遵守の見地からは対象となる化学物質を取扱うときには、各省令にあたって該否の確認が必要になります。

Ⅰ. 排気装置の設置

① 特化則
密閉状態で取扱う場合を除いて、第一類物質の取扱いに係る設備(第3条)、特定第二類物質等の製造等に係る設備(第4条)、特定第二類・管理第二類物質を取扱う設備(第5条) では排気装置の設置を規定しています。

② 有機則
第一種・第二種有機溶剤等(第5条)、第三種有機溶剤等に係る設備(第6条)に排気装置が必要です。有機則は屋内作業場に関する規定で、屋外作業場には適用されません。

Ⅱ. 排気装置の設置要件

特化則第7条に、特定化学物質の取扱い設備での排気装置の設置要件が示されています。有機則(第14条)・粉じん則(第11条)にも同様の規定があります。フード付き局所排気装置に関す要件は次のとおりですが、プッシュブル型換気装置でもフードに関する記述がないことを除いて同じです。

  1. フードはガス、蒸気又は粉じんの発散源ごとに設けられ、発散源にできるだけ近い位置に設ける。
  2. ダクトは、長さをできるだけ短く、ベンドの数をできるだけ少なくし、掃除しやすい構造とする。
  3. 除じん/排ガス処理装置を設置した局所排気装置のファンは、処理をした空気が通る位置に設ける。
  4. 排気口は、屋外に設ける。

特化則は、排気が二次的な災害につながらないように、除じん(第9条)、排ガス処理(第10条)などの除害装置の設置を定めています。有機則には除害装置に関する規定はありませんが、大気汚染防止法の遵守が必要になります。

特化則は第47条で禁止物質の製造に関して、第50条で許可物質の製造の基準が示されており、どちらに対しても設備の密閉化や換気設備の設置を求めています。

Ⅲ. 事業者による局所換気装置の自主検査

事業者の定期自主検査は、一年以内ごとに一回、定期に、次の項目について行い実施し(特化則第30条、有機則第20条、粉じん則第17条)、定期自主検査実施後は、記録を保管します。(特化則第32条、有機則第21条、粉じん則第18条)。

  1. フード、ダクト及びファンの摩耗、腐食、くぼみ、その他損傷の有無及びその程度
  2. ダクト及び排風機におけるじんあいのたい積状態
  3. ダクトの接続部における緩みの有無
  4. 電動機とファンを連結するベルトの作動状態
  5. 吸気及び排気の能力
  6. その他、性能を保持するため必要な事項

特化則では、装置を初めて使用するとき、分解改造、修理を行ったときは、同じ項目での点検を義務付けています。(点検 第33条、点検の記録 第34条の2)

Ⅳ. 排気装置の能力評価

排気装置が設置されていても、その能力が維持され適切に稼動されなければ、作業者は保護されません。そのために、稼動状態での換気装置の能力評価が必要になります。

Ⅳ-1. 作業環境測定による能力評価 

作業環境測定の結果から排気装置の能力と稼動状況が適切であるかどうかがわからないので、特化則と有機則は作業環境測定を義務付けています。指標の数値と環境測定結果の比較で作業環境が評価されますが、各指標数値はそれぞれ使用する目的が異なりますので安易に使用して、素人判断から数字が一人歩きすることは慎まなければなりません。

① 管理濃度 作業環境測定基準に従って実施された作業環境測定結果から、作業環境管理の良否を判断する際の管理区分を決定する指標です。事業者は管理区分により対処すべきことが規定されています。管理区分は複数の測定点のデータ全体を用いて決められますが、個々の測定点のデータからも好ましくない状態にある箇所を知ることができますし、データの分布から作業場の改善すべき点を知ることもできます。網羅的に作業環境を測定する機会も少ないので、作業環境測定結果は管理区分を決めるためだけではなく、作業場の問題点を知るためのを参考になります。

② 許容濃度 日本産業衛生学会が勧告する値です。労働者が1日8時間、一週間に40時間程度肉体的に激しくない労働強度でばく露されても、この数値以下であればほとんどの労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度です。しかし、化学物質の健康有害性への感受性には個人差があるので、この数値未満であれば絶対に安全と言い切ることはできません。許容濃度に限らず、これらの指標の数値は労働衛生について十分な知識と経験を持った人が利用すべきである、とされています。作業場全体の環境評価というよりも作業者へのばく露評価の参考とすることができるでしょう。許容濃度は日本の産業衛生学会だけでなく米国のACGIHも公表しているので、それを参考にすることもできます。どちらの許容濃度も改訂があるので、最新の数値を知っておくことが必要です。

③ 抑制濃度 発生源付近の有害物質の濃度をこの値以下に抑えることで、近傍で作業する労働者へのばく露を安全な水準に保つようにすることを意図して定められた数値です。フード付きの局所排気装置であれば、フードから離れた所定の位置の濃度を測定します。この数値は環境の良否よりも、局所排気装置の能力や使用方法が適切であるかどうかの判断に用いられます。

このようにそれぞれの指標は、使用する意図と目的が異なりますので取扱いには注意が必要で、専門家の助言や協力が欠かせません。各指標の数値は物質によって異なり、すべての物質について定められているわけではありません。これらの値は一致しているとは限りませんが、何桁も違うというほどの大きな乖離もないので、日常的には検知管などによる現場的な測定結果とこれらの数値を比較して、作業環境が適切かどうか、排気装置が適切に稼動されているか、作業方法は適切かということを知ることができます。

Ⅳ-2. 制御風速の測定による能力評価

フード開口部の風速(制御風速)の測定で、換気装置が所定の能力を発揮しているかどうかを知ることができます。排気装置は、有害物質の粉じん、ガス、ミスト等を発生源から排気口に流れる気流に乗せて、取り入れた外気で希釈しながら排出することで、作業者へのばく露の抑制を図ります。排気装置が何らかのトラブルで所定の能力を発揮できていないこともあります。正常に作動していなければ作業者へのばく 露は軽減できません。

特化則にもとづく厚生労働大臣が定める性能 (性能告示)では、制御風速で管理が定められている場合は、ガス状物質で0.5m/秒、粒子状物質では1.0m/秒としています。有機則第16条では、発生源をフードの中にいれる囲い式フードでは0.4m/秒、発生源のそばに取り付けた外付け式フードでは、0.6m/秒)側方吸引式、下方吸引式)、または1.0m/秒(上方吸引式)と定め、粉じん則(第11条第5号)は気流に乗せて排除する対象が粉じん(固体微粒子)ですので、制御風速は囲い式フードでも0.7m/秒、外付け式であれば1m/秒以上の高い排気能力が求められています。(粉じん則第11条第5号の規定に基づき厚生労働大臣が定める要件を定める告示)。

Ⅳ-3. 作業環境の日常的な管理

簡易的ではあっても日常的な測定で、作業環境の確認や排気装置稼動による効果の確認ができます。検知管による簡易的な測定やパッシブサンブラーによる定点観測などで、作業現場の実状を作業者が知ることは、日常的な作業環境改善活動につなげることもできます。排気装置の稼動は、特化則や有機則では屋内作業場に関する規定ですが、屋外作業場では化学物質へのばく露が全くないわけではありませんので、ここに記した簡易的な測定であっても作業環境の良否を知ることは可能です。屋外作業場では作業環境の良否を知ることよりも、作業者個人の化学物質へのばく露状態を知るのであれば、個人サンプラーを用いることもできるでしょう。厚生労働省は「屋外作業場等における作業環境管理に関するガイドライン」を公表していますので、これが参考になります。

Ⅴ. 排気装置使用の注意点

作業者への有害物質のばく露を避けるために広く用いられている排気装置は、労働安全衛生法(および特別規則)では、事業者に適切な能力と維持管理を求めており、以下のように整理することができます。

① ばく露対策としては、作業者へのばく露の可能性がない「密閉型構造」の採用を優先する。

② 密閉型構造の採用ができない場合には、局所排気装置やプッシュプル型換気装置を採用せざるを得ないが、排除する対象物の性状を考慮して、適切な型で適切な能力を有する設備を選択し、事業者に設備の維持管理責任があることを認識する。

後からの設備設置は様々な制約を受けることがあるので、排気装置の設置を前提として作業場所を事前に考えるほうがいいでしょう。

③ 排気装置は、特化則・有機則・粉じん則などの複数の特別規則で規定されているように、作業者のばく露防止手段として一般的な方法です。特定の法規制化された物質による健康影響への予防策に留まらず、発散が予想されるすべての化学物質へのばく露防止策と理解して設置を考える必要があるでしょう。

Ⅵ. 呼吸用保護具の使用と排気設備

排気装置が設置され正常に稼動している状態でも、呼吸用保護具の使用が望まれます。さまざまなタイプのものが市販されていますが、国家検定に合格したもので、発散が予想される物質に適したタイプのものを使用します。呼吸用保護具のうち吸収式の防毒マスクには、安全に使用できる破過時間が決められていますので、それを守らなければかえって作業者が危険になることがあることに注意が必要です。

排気装置による作業者保護は、本質的な対策ではないので何がしかのリスクを残しています。マニュアルに従って正しい手順で取扱っていても、排気装置を万全の状態に置いて作業を行っていても、思いもよらない形で作業者がばく露されることがあります。作業環境測定の結果から、おそらく健康障害のおそれがないだろうと評価される状態でも、呼吸用保護具は着用されるべきです。保護具の使用は作業者を化学物質のばく露から守る最後の砦で、不測の事態でも作業者を守る装備と考えなければなりませんし、労働安全衛生法では、呼吸用保護具の着用だけでは、作業者の化学物質へのばく露対策の手段をとっているとは見なしません。特化則(第43条)では換気装置の設置の有無とは関係なく、呼吸用保護具の使用は対象物質を取扱うすべての作業場に適用されることとしています。

Ⅶ. まとめ

排気装置の利用は化学物質の発生源対策として最も一般的に用いられている方法でしょう。しかし、この対策は本質的な安全衛生対策ではないので、適切な設備の設置と稼動が必要であることはこれまでにも記してきたとおりです。労働安全衛生法(とその特別規則)に従うだけでなく、SDS等の化学物質に関する有害危険性情報を活用して、安全衛生対策としてより効果のある運用を図ることが必要と思われます。未規制物質を原因とする重大な労働災害が報告されているので、労災の防止には法令の枠組みを超えた事業者の自主的な活動が重要になってきています。

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