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第十九回 労働安全衛生と化学物質管理

日本ケミカルデータベース株式会社
コンサルタント 北村 卓

セーフティーアセスメント指針

厚生労働省は昭和51年に作成・公表した「セーフティーアセスメント指針」を平成12年に改正しました。リスクアセスメントとセーフティーアセスメントの間に、目標と実施することの間にそれほど大きな違いはありませんが、「セーフティーアセスメント」は、労働安全衛生法第88条の計画の届出に際して、プラントの事前評価を行うときの指針と位置付けられています。プラントの安全性評価に用いる手法として、HAZOP,FMEA,WHAT-IFなどが例示されています。
指針では、比較的大規模な機械・設備等の導入前又は工事の施工前に、設備、工法等について、稼動中又は施工中における危険・有害性を、 設計又は計画の段階で定性的、定量的に事前評価し、その評価に応じた対策を講じる、こととされています。「化学プラントにかかるセーフティ・アセスメントに関する指針」には、以下の手順が示されています。

第一段階; 関係資料の収集・取りまとめ

当然のことですが、プラントと工程を良く知らなければアセスメントはできません。
必要とする資料として、立地条件、プラント配置図、ストラクチャー・計器室・電気室の図面、取扱う化学物質の物理的化学的特性と健康有害性、起こり得る反応、製造工程概要、工程系統図、プロセス機器リスト、配管・計装系統図、安全設備の種類と設置場所、類似装置・類似プロセスの災害事例、運転要領、要員配置計画、緊急時の連絡体制、安全教育訓練計画、その他の関係資料があげられています。
要するにプラントの建設と稼動に用いられる資料の全てと考えてよいでしょう。収集された資料は続く第二段階の定性的評価・第三段階の定量的評価に用いられます。安全設計には可能な限り人の介在する工程ではフールプルーフの仕組みなどの誤動作防止対策が、設備装置については、異常時に安全側に作動するフェイルセーフの考えかたなどが盛り込まれていることが必要です。

第二段階 定性的評価; 診断項目による診断

以下を診断項目として、プラントの安全性を定性的に診断します。この段階で問題点が見つかれば設計変更などで対処することになります。
定性的評価は診断項目、関係法令等を参照してプラントの安全性評価を行うもので、診断項目として以下の事項が例示されています。

  1. 設計関係
    • (イ) 立地・自然条件
      • 地盤、地震強度、降雨量、風速、気温、ユーティリティの確保、公共施設、市衛地等に対する安全配慮、近接工場からの災害の波及防止への考慮
    • (ロ) 工場内の配置
      • さくや門の設置
      • プラントの境界からの安全距離、貯蔵タンク間と境界からの安全距離と防液堤の設置
      • 居住区、倉庫、事務所、研究所等および発火源からの距離
      • 計器室の安全確保
      • 装置間のスペース
      • 荷積み、荷卸し地区、廃棄物処理施設の設置
    • (ハ) 建造物
      • 耐震設計、基礎・地盤強度、部材・支柱の強度、不燃化の床・壁等の材料、火災拡大要因の最小限度への抑制、危険なプロセスの隔離、危険有害物質の換気対策、避難口・非常用通路、排水設備等
    • (ニ) 消防用設備等
      • 消火用水、散水設備の能力・配置・検、整備
  2. 運転関係
    • (イ) 原材料、中間体、製品等
      • 危険性の低い地区に安全な方法での持ち込み。受入れ時の作業規程、物理的・化学的性質とハザードの把握、腐食性の有無、不純物の影響、高ハザード物質の所在・量の把握、
    • (ロ) プロセス
      • 問題点の集録と活用配慮
      • 類似装置・プロセスの災害事例の調査とその結果の設計・規定への反映
      • 高ハザード物質の保有量
      • プロセスの反応式やフローシートによる適正表示
      • プロセス運転のための作業規程
      • 以下の事項の防止対策
        温度異常、圧力異常、反応異常、振動・衝撃、供給異常、流動異常、水・汚染物質の混入、漏えい又は流出、静電気、不安定な反応の可能性、
    • (ハ) 輸送、貯蔵等
      • 輸送時の作業規程、 潜在的危険性の把握、不時放出に対する予防対策、不安定物質への刺激要因の抑制策、タンク、配管等の耐腐食性、輸送作業のオペレーターの安全確保、配管内の流速条件、廃棄物処理対策、衛生設備等の設置
    • (ニ) プロセス機器
      • 安全面での事前検討、オペレーターが監視・措置しやすい設置、誤操作防止の人間工学的配慮、詳細な点検項目、安全制御設計、検査・保全のしやすい配慮、異常時の安全側作動、検査・保全計画、予備品、安全装置の保護、重要設備の照明と停電時の予備照明、
  3. その他
    消防、病院等の防災救急機関の支援体制、消火活動の体制

第三段階 定量評価

この段階では、物質、エレメントの容量、温度、圧力及び操作の5項目により、総合的に化学プラントの安全性にかかる定量的な評価を行います。災害の起こりやすさ及び災害が発生した場合のその大きさとを同時に評価(リスク評価)し、定量化を行い危険度ランクを付ける。毒性についての配点、ランク付けは示されていませんが、「毒性を考慮すべきもの」が表に例示され、情報等を収集し、必要な対策を検討するものとしています。
定量化は評価表に基づいて、物質・エレメントの容量・温度・圧力・操作の5項目を4段階に分類し、A(10点)、B(5点)、C(2点)、D(O点)の各点数を与え、合計点で以下のように危険度のランク付けを行います。

16点以上ランクI危険度が高い
11~15点ランクII周囲の状況、他の設備との関連で評価
1~10点ランクIII危険度が低い

第四段階 プロセスの安全評価

第3段階の危険度ランクがIのプラントについては、プロセス固有の特性等を考慮し、FTA(Fault Tree Analysis; 故障の木解析)、HAZOP(Hazard and Operability Study),FMEA(Failure Modes Effects Analysis; 故障モード影響解析)等で、危険度ランクがIIのプラントについては、What-if手法等で潜在危険の洗い出しを行い、妥当な安全対策を決定します。
FTAは頂上(故障)事象を想定し、それの原因となる欠陥事象を帰納的に遡及して故障の未然防止を図るもので、FMEAはシステムの故障がどのような故障・障害をもたらすかということを演繹的に導く手法で、化学プラントだけでなく様々な産業で用いられています。これに対して、HAZOPはプラントの運転が設計仕様を逸脱した場合の原因と危険事象を解析するもので、主に化学プラントで用いられています。

第五段階 安全対策の確認

第四段階の評価結果から、設備的対策・管理的対策を検討し、最終チェックとします。
設備的対策で、化学プラントの潜在危険に対して安全対策がとられていることを確認し、不測の事態で災害が発生した場合の拡大防止対策を検討します。
管理的対策としては、適正な人員配置・教育訓練などがあります。
非定常作業については、「化学設備の非定常作業における安全衛生対策のためのガイドライン」等を参照して、対応マニュアルを事前に策定することになります。

この指針は、事業場が行うべき必要最低限の目安を示したものです。「評価の結果、安全対策の妥当性が確認された設備でも、機械の誤作動・反応条件の設定ミス、物質の誤った取り扱い等により予期せぬ大災害を招くことも懸念されるので、事業場は指針に基づく評価に加えて、事業場の特性等を加味した安全性評価を行うことが望ましい」とされています。
更に一歩進めて、労働安全衛生マネジメントシステムの導入等システム化された安全衛生管理を行うことを推奨しています。

健康有害性(毒性)に関して、労働安全衛生法の特別規則(特化則、有機則、鉛則、四アルキル鉛則)の対象物質、毒劇法の毒物・劇物、毒性ガスや産業安全衛生学会やIARCの発がん性物質が対象物質として例示されていますが、指針の手順には明記されていません。それはこの指針がセーフティ(安全)アセスメントとされているように、労働安全衛生法ではどちらかというと化学物質の物理危険性に対する予防を「安全」と言い表し、化学物質の毒性や作業環境に関わる事項は「衛生」と呼んでいるということとも関係があるのかも知れませんし、それだけでなく健康有害性の原因となる作業環境からの化学物質のばく露については、様々なばく露濃度低減の手段が選択できますが、その結果としての作業環境濃度を予め正確に見積もることは難しいからだと思われます。
作業環境のばく露濃度は、完全な密閉化で全く作業者へのばく露がないようにする以外には、設備的に最善の対策を実行しても、稼動時の実測によらなければ実状はわかりません。作業者への健康影響が危惧されるばく露濃度については、事前に実施されるセーフティーアセスメントよりもプラント稼動時の実測値を指標として、対策を考えるほうが現実的と思われます。

なお、「化学設備の非定常作業における安全衛生対策のためのガイドライン」(平成8年6月10日基発第364号、改正; 平成20年2月28日 基発第0228001号)の説明は省略しますが、厚生労働省のホームページ等で、必要に応じて、内容の確認をお願いします。厚生労働省は、非定常作業には、保守点検作業だけでなく、異常反応の反応制御、事故発生等の緊急対応などが含まれるとしています。

このように指針の「セーフティーアセスメント」は、新たに特定の化学品を生産するプラントの安全状態を、化学物質、施設・設備、生産体制等の全てにわたって検証しようとするものであることがわかります。既存の施設・設備を使って、多種類の化学品を生産するようプラントについては、当初の生産予定品目はともかく、その後品目が追加されたり変更されていくと、プラント設計時のセーフティーアセスメントの結果が、実態とは異なるようになることもあるでしょう。そのときの安全性については、次に記す「リスクアセスメント」でリスクが許容されるか否かの判断をすることになりますが、既存の施設・設備についても、安全設計の原点に戻り、セーフティーアセスメントで現状での安全性を確認する作業を行うことも必要なのではないかと思います。それから設備全体を見たうえで、必要であれば安全対策への追加投資計画が策定できるものと思われます。

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