大和化学工業株式会社

オー・ジーグループの一員として、繊維・製紙・樹脂業界に向けた「抗菌剤」「消臭剤」「防炎剤」「防虫剤」など多様な機能薬剤の開発・製造に取り組んでいる大和化学工業株式会社。長年にわたり培ってきた技術力と、評価技術センターに代表される自社で保有する性能評価機能を組み合わせることで、確かな品質と信頼性を備えた製品を社会に届けています。
開発から評価までを一貫して行える体制により、安心・安全な暮らしや持続可能な産業活動の実現に貢献し、人々の生活や産業の発展を支えることを目指している企業です。
法規制や危険品目録の改訂頻度が高まり、ツールの導入は不可避だった。
ネット検索による情報収集で対応していた当時は、法規制の情報を調べるのに数日かかることも珍しくなかった。また当局のサイトを参照して調べようにも掲載情報がテキストデータではなく画像で貼られており、文言をコピーすることができなかったばかりか、非英語圏では言語がアルファベットではなかったために画面を見ながらテキストを打つこともできず、途方に暮れたこともあったという。
各国の化学品の法規制変更や、危険品に該当する目録の改訂頻度が高まりつつある中、顧客や社内からの質問にようやく回答できたと思ったらまさかの改訂で再調査の繰り返し。顧客からの連絡で改訂を初めて知ったというケースも少なくなかった。さらに、輸出後に相手国の税関で理由不明なストップを受けたり、法律の条文に記載されていないにもかかわらず全成分開示の要求をされるなど、従来の方法では限界が見えてくる中でツールの導入はもはや喫緊の課題だったが、その答えはネット検索の際にいつも検索結果に上がってくるJCDBのサービスにあった。
化学品の法令や規制リストの改訂スピードに対応できなくなるという不安。
私が研究開発部門の法規制担当として従事するようになったのが2014年。ちょうどその前年にEUのBPR制度が運用開始となり、翌年には中国の危険化学品目録が発効するといったタイミングです。
当時は化学物質についての法律整備に対応する新興国もどんどん増えており、それまでの手順、すなわち各国当局のホームページへアクセスして確認するという方法には限界が見えつつありました。
その当時、弊社製品の該非と輸出可否の確認を行うためには、まずアクセスしたリストをひとつひとつ開くことから始まり、必要に応じて翻訳したのちに内容を確認して弊社製品の物質情報と比較。規制に該当した場合には調査を行って対応策を探し、社内外からの依頼元へ回答するという一連のプロセスを経ていました。
ところが法規制とそれに紐付く化学物質リストの改訂スピードが想定以上に早くなり、無事に回答できたと思って安心していたらすぐに再調査が必要になるというケースが増えてきたのです。法規制を確認すべき国は増え、確認する内容は広がり、深まってゆくばかり。加えて製品の出荷先も増加していましたから、もはや何らかのツールなくしては早晩対応できなくなるであろうことは明らかでした。
法規制を検索すると必ず出てきた「Chemlinked Japan」
現在弊社ではChemlinked Japan とIlluminatorを利用しています。まずChemlinked Japanからお話ししますと、導入のきっかけはネット検索の結果でした。各国の法規制や関連情報をネットで調べるとき、検索結果にChemlinked Japanが必ず上がってきていたことが大きいですね。導入の決め手は、弊社の主な輸出相手国である東南アジアに関する法規制についての緻密な情報発信がなされることと、年会費のみでウェブセミナーがいくつでも受講可能だったこと。現在は主に各国対応のSDS・ラベル作成、輸出可否の確認、各国の最新法規制の確認に加え、顧客からの調査依頼時に気になった化学物質情報の確認に活用しています。
Chemlinked Japanの導入前はほぼ手作業に近い形での対応でしたので、各国のインベントリーや法規制の確認に手間取って輸出可否の確認にかなりの時間がかかっていましたし、各国のバイオサイド規制への対応も後手に回りがちでした。また、法律の条文に記載のない理由不明な全成分開示の要求をされたりしても対処に困るなど、さまざまな課題を抱えていましたが、Chemlinked Japanを導入したことで一足飛びにラクになりました。
心強かったコンサルティングサービス
余談ですが、Chemlinked Japanの利用登録を行ったときに1回だけ無料コンサルティングを受けられるキャンペーンが展開されていて、これにはたいへん助けられました。
中国で危険化学品目録が導入された頃なので2015年前後だと思うのですが、弊社から輸出した製品が中国現地で通関できずに保税倉庫で留め置かれただけでなく、廃棄代も弊社持ちでそのまま廃棄させられたという凄まじい事態が起こったのです。
そのとき弊社から輸出した製品には中国での危険化学品に該当する物質が入っていました。中国の輸入会社へ事前確認したところ「確定原則に該当した危険化学品であってもこの製品は輸入できる」との回答があったので、ならば大丈夫だと出荷したわけです。ところが中国の税関はNOを突きつけてきました。なんと「これは危険化学品で登記もされていない。そのため港から出すことはできない。そちらへ返却することもできないので、この場で廃棄する」との判断が下されたのです。
そのときはもう廃棄する他に手立てはありませんでしたが、今後どうすれば良いかをJCDBさんのコンサルタントにアドバイスを仰いだところ、「これは登記が必要なものですね」との回答をいただき、たちどころに次回以降の対策を講じることができました。以降は輸入会社に「これは危険化学品に該当する可能性のある製品ですが、必要な手続きは行いましたか?」と必ず確認を取るようになりました。
ほぼ毎日利用している「Illuminator」
導入の理由は海外法規制への対応と調査回答の正確性、そして何よりもスピードアップに尽きます。最初にもお話ししましたが、Illuminator導入前は各国当局のサイトヘ法規制を調べに行き、翻訳しながら内容を読み、規制に該当することは分かったものの、どう対応したら良いのだろう…と頭を抱える流れでした。ものによっては調査に一日二日かかっていたものが、今ではCAS 登録番号 (CAS RN)を入力してリターンキーを押すだけ。拍子抜けするほどのスピードです。
ちなみに導入時にはLOLIという製品名で海外の法規制検索システムでモニタリング機能がなかったのですが、Illuminatorになってからはモニタリングができるようになりました。チェックしたい物質やデータ項目をあらかじめ登録しておけば、1週間間隔でデータが更新されているかを確認してお知らせが届くという仕組みです。常に最新の情報が提供されることはとても大きなメリットですね。現在は各国法規制・自主規制の該非確認や、社内使用物質の各国最新法規制への該非モニタリングなど、ほぼ毎日使っています。
なおLOLIと同時期に導入を検討したExESSの物質情報を引用するために、Datafeedもセットで契約しています。JCDBさんのデータベースも利用していますが、新しい物質は次々と出てきます。海外の規制に関しては、JCDBさんのデータベースにはまだ収載されていない場合もあり、弊社ではIlluminatorとDatafeedの併用は必要不可欠なのです。
もっと早く導入していれば…
思い起こせば2015年、ちょうどLOLI Desktop(現、Illuminator)を導入するかどうかというタイミングでしたが、タイで既存化学物質の国家インベントリーを作成することが発表されたときのことです。
当局のサイトにアクセスしても、タイ語で書かれた内容が分からなくてほとほと困った記憶があります。その頃はまだインターネット上での翻訳サイトもそれほどレベルが高くなかったこともありますが、そのときはそれ以前のお話でした。こともあろうに当局のサイトに掲載されている文章は、コピーできないようにテキストの画像が貼ってあったのです。LOLI Desktop(現、Illuminator)さえあればそんな苦労はせずに済んだのに、と今なら笑って言えますが、そのときはタイ語のテキストをどうやって打てばいいのかも分からず、どこかが情報を出してくれないかとひたすら待っていました。
データベースに情報がなく、ネット検索でも出てこない物質でも安心。
弊社で使用する物質によっては、NITE-CHRIPやECHA CHEMにも情報がなく、有害性を調べようにもネット検索では出てこないことがあります。これは今でもそうですが、安衛法では登録があるけれど化審法ではまだです、というような物質もありますし。そうなると、原料メーカーのSDSしか信用できるものはないわけです。
ところが中を見ても「全てデータなし」。SDSは現在あるデータだけで作成するという決まりになっていますので、データがなければないで仕方がない、というところではあるのですが、そうは言ってもどうしよう…となりますね。そうした状況の中でも安全性を担保するためのツールとして、JCDBさんのサービスはたいへん大きな役割を果たしてくれています。Chemlinked JapanとIlluminator、利用する頻度は異なりますが、業務を行う上では文字通りの両輪です。どちらかが無くなってもやっていけるか?と訊かれたら…うーんと唸るしかありませんね。
化学物質規制情報に関わる人を増やしていきたい
弊社は大きな会社ではないため、各業務の担当者はどうしても少人数にならざるを得ず、私が受け持っている法規制担当もまた例外ではありません。実務担当3名と確認者2名の合計5名となってはいますが私以外が他業務との兼務であり、現実的に法規制担当者としてIlluminator、Chemlinked Japanをメインで利用しているのはおおむね私一人だったりします。一方で大半の社員は化学物質の規制情報に触れる機会がありません。そこで、各種用途に応じた各国の法規制動向について日々確認し、新しく得た内容を皆で簡単に情報共有できる社内発信の仕組みを作りたいと考えています。
現時点ではまだまだ構想の域を出ませんが、例えばIlluminatorを使って検索できる対象はまさに弊社が手がけている防虫・農薬等々の材料となる物質なので、「各国で新しく登録された化学物質情報」を引いてきて日本の法律上使えるものかどうかを確認し、その情報を「こんな物質が見つかったけれど使えるだろうか」と開発担当者へ回せるようなスキームを組めないか、という構想があります。
また、営業をはじめとする他部署の人たちにもChemlinked Japanにアクセスしてもらうことで各国における化学物質規制の情報を学んでもらいたいとの思いもあります。
関わる人が増えればそれだけキャッチできる情報量が増え、情報を取りこぼす可能性も減りますので、属人的な状況から段階的に脱却するための足がかりになるのではないかと期待しています。





















